発達障害とは?

発達障害は「障害」、「病気」というよりも生まれつきの特性と考えられます。
発達障害の原因としては様々な外因(脳障害)、内因(遺伝子によって先天的に用意された素質)に環境要素(様々な養育環境)などに影響されて現れると現在では考えられているようです。

親の育て方のみで起こるものではありませんが、周りの環境に敏感で影響されやすい素因をもっていることが多く、よく泣いて育てにくい子供として気づかれることも多いでしょう。また最近では核家族化が進み、地域で子育てする環境が失われ子育ての負担は母親一人に負わされストレスも多くなっています。地域の子供同士が自然の中で遊ぶことも減り、テレビやスマホ動画にあやされることも発達障害が増加する要因の一つになっているのではないでしょうか?

発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、などが含まれます。
いくつものタイプの発達障害の傾向が併存していることもよく見られます。

当院では専門的な治療を行っておりません。
専門的な治療の可能な医療機関をご紹介させていただきます。

自閉症スペクトラム障害とは

現在の国際的診断基準の診断カテゴリーである広汎性発達障害とほぼ同じ群を指しており、自閉症、アスペルガー症候群*、そのほかの広汎性発達障害が含まれます。症状の強さに応じて、いくつかの診断名に分類されますが、本質的には同じ1つの障害単位と考えられています(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。
典型的には、下記の3つの特徴が出現します。自閉症スペクトラム障害の人は、最近では100人に1~2人程度存在すると報告されています。男性は女性に比べて数倍多く、一家族に何人もいることがあります。

  • 相互的な対人関係の障害
  • コミュニケーションの障害
  • 興味や行動の偏り(こだわり)

*アスペルガー症候群
他の自閉症スペクトラム障害と比較して、「知能低下」が認められないのが特徴です。つまり、知能は正常かむしろ高い場合もあるのに、人とうまくコミュニケーションが図れない、興味が極端に限定されていて、それによって日常生活に支障を来たしている場合などは、アスペルガー症候群が疑われます。

症状

1歳を過ぎた頃から、障害の兆候が現れ始め、典型的には1歳代で、「人の目を見ることが少ない」「指さしをしない」「他の子どもに関心が無い」などの様子が見られます。対人関係に関連するこうした行動は、通常の子どもでは急に伸びるものですが、自閉症スペクトラム障害の子どもでは明確な変化が現れません。保育所や幼稚園に入っても一人遊びに興じるばかりで集団行動が苦手など、人との関わり方の独特さで気づくことがあります。
言葉を話し始めた時期に遅れは無くても、話したいことしか口にせず、会話が成立しにくい傾向があります。また、電車やアニメ・キャラクターなど、自分の好きなことや興味のある対象には毎日何時間でも熱中したりします。初めてのことや、決まっていたことの変更は苦手で、そうしたことに対応するのに時間がかかったりもします。

そして、思春期や青年期になると、自分と他者との違いに気づいたり、対人関係がうまくいかないことに悩んだりし、不安・うつ症状を合併するケースもあります。就職して初めて、仕事を臨機応変にこなせないことや職場での対人関係などに悩み、自ら障害ではないかと疑い、医療機関を訪れる人もいます。子どもの頃に診断を受け、周囲の理解を受けて成長した人たちのなかには、成長とともに症状が目立たなくなる人や、能力の不均衡を上手に活用して、大いに活躍する人も見受けられます。

治療

幼児期に診断された場合には、個別または小集団での療育によって、コミュニケーションの発達を促し、適応力を伸ばすことが可能です。また、療育を経験することによって、新しい場面に対する不安が減り、集団行動への参加意欲が高まります。言葉によるコミュニケーションに頼り過ぎず、視覚的な手がかりを増やすなどの環境面の工夫をすれば、子どもの不安が減って気持ちが安定し、混乱が少なくなることが期待できます。
早期に診断をつけることは、保護者が子どもをありのままに理解し、その成長を見守っていくことに役立ちます。自閉症そのものを治す薬はありませんが、睡眠や行動の問題が著しい場合には、薬の服用について医師に相談すると良いでしょう。

思春期以降になって不安・うつ症状が現れた場合には、抗不安薬や抗うつ薬を服用すると改善することがあります。しかし、その場合にも、症状が現れる前に過大なストレスが無かったか、生活上の変化が無かったかなど、まずは環境をチェックし、その調整を試みることが大切です。
また、幼児期から成人期を通して、身近な人が本人の特性を理解することが重要です。それによって本人が安心するだけでなく、保護者から教師、上司などに対して特性を伝えることによって、本人に適した学校や職場環境が整い、“支援の輪”が広がります。

注意欠如・多動性障害(ADHD)とは?

発達年齢に見合わない多動―衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が、7歳までに現れます。学童期の子どもには3~7%程度存在し、男性は女性に比べて数倍多いことが報告されています。また、男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと言われます。

症状

7歳までに、多動―衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が現れ、そのタイプ別の症状の程度によって、「多動―衝動性優勢型」「不注意優勢型」「混合型」に分類されます。
小学生を例にとると、多動―衝動性の症状には、座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊んでいられない、じっとしていられない、しゃべり過ぎる、順番を待てない、他人の会話やゲームに割り込む、などがあります。
不注意の症状には、学校の勉強でうっかりミスが多い、課題や遊びなどで集中が続かない、話しかけられていても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやり遂げられない、課題や作業の段取りを組むのがへた、整理整頓が苦手、宿題のように集中力が必要なことを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすい、などが挙げられます。

多動症状は、一般的には成長につれて軽くなるケースが多いのですが、不注意や衝動性の症状は半数が青年期まで、さらにその半数は成人期まで続くと言われます。また、思春期以降、不安・うつ症状を合併する人も見られます。

治療

幼児期や児童期に診断されると、多くの場合、薬物療法と行動変容の促進、および生活環境の調整などが行われます。
薬物療法としては、脳を刺激する治療薬が主に用いられます。どちらも脳内の神経伝達物質の不足を改善する働きがあります。

生活環境の調整としては、勉強などに集中しないといけない時には、遊び道具を片づけ、テレビを消すなど、集中を妨げる刺激をできるだけ周囲からなくすことが大切です。また、集中する時間は短めに、一度にこなす量は少なめに設定し、休憩をとるタイミングをあらかじめ決めておくのも効果的です。

自閉症スペクトラム障害と同様、保護者をはじめとする家族がADHDに対する知識や理解を深め、本人の特性を理解することが、本人の自尊心の低下を防ぎ、自分を信じ、勉強や作業、社会生活に対する意欲を高めることにつながります。